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あくつけき

日記みたいな

化粧と貞操帯

昨日の学校はとても退屈でつまらないものだったんだけど、一日で見ればとても素敵だったんだ。

いやつまらないこともなかったな。相変わらず言語学には興味が持てなかったが四限の授業は川上弘美が題材に。

川上弘美の事を好んで読む人はだいたい少女であるような印象。もちろん年が少ない意味では無くて。川上弘美は、きちんと読んであまり好きにはなれなかったんだけど、少女は好きなんだろうな。好きな人が好んでいることが多い作家。昨日の好きな人はあまり好きでは無いのだろうけど。

 

授業を終えて西宮北口ジュンク堂へ。目当ては中上健次の『化粧』と『魔性の女挿絵集』。夏に入る頃東京で展示あったらしいんだけど東京はなぁ、、、って行けなかったんだよね。橘小夢とか、うん。狐好きだなぁ。写真を撮ってくる課題は船岡山の北の今宮神社にしましょう。狐の人形を胸に抱えて行くのがいいのだろうけどどこに売ってるのか。

あ、ゼミ休講になっちゃったし今日行こうかな。そうするべきな気がしてきた。3限終わりに行くか。ああ軽く二日酔いだな。 さっき汗腺から日本酒を出すために一時間ほど風呂に入ってたんだけど心臓きつかったなぁ。すっごく痛かったよ、酒飲みあるある。二日酔いの長風呂ダメ絶対。

 

さて、本屋から出たところで時刻は五時。約束の時間までは一時間。そういえば家の近くに蝋燭屋が出来たのだった。一時間は家で荷物をまとめて蝋燭屋を冷やかすのにピッタリな時間だと思い店に向かう。しかし店は開店以来初めての休日だったらしくシャッターが。どうしてこうも世間は俺の浪費を嫌うのだろう。いや、もちろん冷やかしだって。うん多分。

でも閉まっててよかったんだよ。そのまま家に帰って支度してたら大してだらだらとしていた訳でもないのに待ち合わせ場所に向かうのに丁度いい時間。行かなくて良かった。今度またじっくりだな。

 

53分に着く。そのまま読みかけのヴィアンを手に取る。手は痛かったがなれっこだ。そのままいつもの様に聴覚を音楽に、視覚を文学に支配されたまま時間を忘れていたら顔を覗きこまれた。約束の時間からは少し遅れていた。なにやら電車が遅れてしまったらしい。こういう時一人で時間を忘れる術を持っていると便利だなと改めて自覚する。ただ、「電車遅れてるから本屋にでも行っててって連絡したのに返信ないから申し訳無さでいっぱいだったんだから。」と彼女。申し訳無い、普段はかなり携帯見てる方何だけどな。安心しきっていたのだろうな。

二言目には「何読んでいたの?」文学部に在籍していようとこんな事を聞かれることは殆ど無い。何故か急に恥ずかしくなったので秘密にしておいた。

 

そのまま居酒屋へ。わざわざ二人で日を決めて会うのは初めてだったのできちんと話が出来るものかと心配だったがそんなものは杞憂でしか無かったな。

「旅行で金沢に行くんです。」

「私も行ったよ!泉鏡花記念館には尾崎紅葉に添削してもらってる最中の鏡花の原稿がおいてあってもうきゃあきゃあ言ってしまったんだよ。」

「ええ見たい!室生犀星記念館行くつもりだったんだけどリニューアル閉館で悲しんでたんだよね。『外科室』なんて素敵だよね。あとは『春昼』とかも好きだなぁ。」

「逗子行ってみたいよね!」

「ああ本当に!」

そんな感じで話はどんどん盛り上がったな。会話以外では桜文様のブックカバーの中身が澁澤龍彦訳の『暗黒怪奇短篇集』だった事が印象的。他にも「◯◯くんに合わせて黒を着てきたんだ~」とかもう、なんか、なんか。ねえ。

 

この人は本当に俺の言葉を咀嚼することに長けているんだよ。それは俺と思考が似ているわけではなく、その理解力の高さから色んなぼやけた物を形づけてきた経験から来るものなのだろうけど、つまり向こうにとっての俺は取るに足りない1つの思考なんだけど。こちらからすれば宝物になるんだよね。

ああ好きだなぁ。この世には知らなくていいことなんて1つも無いのだろうな。これから会う機会は少しずつ失われていくのだろうけど。知らなくてよかったなんて思わない。華には触れるべきだなと心から。失われていくからといって後悔するのも駄々をこねるのも趣に欠ける。

 

 

森茉莉の『甘い蜜の部屋』で結ぶと両端が吊り上がる少女モイラの脣が賞賛されていたことを思い出し、脣を眺めた。あの人の脣の端は確かに吊り上がっていたな。もっとも自分の顔には不満らしいが。

 

 

 

所で駅での事を思い出してしまい赤面。なんてことを口走ってしまったのだろう。随分と酔っていたのか。

さて今日しなくちゃいけないこともいっぱいあるな。まずは学校に行こう。

ところであれだけ酔ってたはずなのに、きちんと化粧落としてた事にびっくり。女子力高いな

 

 

 

3月 追記

 

「本当に好きです」と伝えた事はこの日が初めて。岡本駅で、考えるよりも先に言葉が出ていた。

自分が思わず口にした「好き」という言葉。これが恋だと勘違いさえしなければ、悲劇も起きなかったんだろうな。