読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

あくつけき

日記みたいな

かわりものたちの哲学

おもいでの記録

ここ三日間ぐらいどうも身体に支障をきたしていた。身体的な支障は通常精神から来るものが多い。握力を失うのはその典型で、まぁよくある事だ。現に今も昨日一昨日に比べれば随分とマシにはなったがパソコンに向かい文を入力するのにとてつもなく労力を使う。なぜだろうな。今の俺は幸せで仕方がないはずなんだ。失うことを恐れているのか。手に入れてすらいないのに。

 

 

フェミニストである女性を尊重する男性はどのようにして女性と付き合っていけばいいのだろうね。」

「私は女性が完璧でないならばずっと我慢するべきだと思うし都合が悪くなった時だけ女性の権利を主張するのはおかしいと思う。」

「尤も な意見だね。それが女性の口から出るなんて思いもしなかったよ。でも俺はその時はそうしたかったんだから仕方がないって考えも大切にしたいな。それを許容できないなら男女が付き合っていくことは不可能になる。」

「そうだね。そもそも付き合うべきではないのだろうね。」

 

 

 

昨日の朝はとても憂鬱だった。好きな人と出かけるという素敵な一日になるはずなのに正直俺は全く行きたくなくなっていた。理由がはっきりしない事が俺を更に苛立たせたしその苛立ちはわかりやすく身体を侵食していた。その人も恐らく昨日を楽しみにしていたはずだ。それは俺に会えるからでもあっただろうし自らの好奇心を刺激してくれる「何か」を俺が提供してくれるかもしれないといった希望から来ていたものでもあったのだろう。そう、彼女は俺に会いたがっていたはずなのだ。

 

心臓より高く右腕を上げることに多大な倦怠感を抱きながら身だしなみを整えた。ブラシを使って癖を取った後他人にばれない程度に化粧をする。ああ不気味地肌がこれくらい白かったらなぁと現実を嘆く。髪の調子が良い事から外の天気は恐らくとっても晴れているのだろう。カラッカラだ。地肌もさらさらでとても気持ちが良い。

 

身だしなみを整え歯茎から血が出るんじゃないかってくらいに歯を磨いていたら「待ち合わせの時間を30分遅らせて欲しい」とのメール。構わない。家から出ていないのだから。と返信をする。署名設定を常時オンにしていたせいで同い年の相手だというのに署名がついてしまう。気にしない。

 

 

行きの阪急電車で例に違わず倉橋由美子を読む。相変わらずどの登場人物も友達になれそうだなと思う。もちろん「友達になろうよ」なーんて低俗な接触の仕方では到底なれはしないだろう。気付いたらそこにいるのだ。

 

待ち合わせ場所の紀伊國屋前には20分前に着いてしまった。早すぎるし寒すぎるので紀伊國屋の中へ。平野啓一郎の新刊出てたなそういえばと、頁をペラペラと。感情移入せずに綺麗に読めそうで気になったがいかんせんお金がない。山尾悠子を買おうか悩んだが三千円。やはりお金がない。結局立ち読みの後恩田陸の『禁じられた楽園』を買って入口の前に。あぁ宮木あや子の『官能と少女』も気になったなぁ。

 

結局彼女は自分で指定した時間よりも遅れてやってきた。これは正直有り難い事だ。俺は人を待たせることが本当に嫌いで仕方ないのだ。待ち合わせ時間ぴったりに行った時に先に人にいられたりしたら俺はもう耐えられない。その点遅刻する人は楽で時間ぴったり行ったら待たされてしまうのだもん安心だね。

 

まずは昼食へ。俺は好きな物を聞かれたら「鴨鍋と小籠包」と答える程度には小籠包が好きだ。所で鴨鍋が高級料理の一つであることを知ったのは最近の話。年間何千万も稼いでいる人が教えてくれたので恐らく間違いでないのだろう。

中華料理屋に行く。彼女はおかゆを食べていたな。おかゆを食べによく出かけるらしい。おかゆが嫌いで仕方ない俺にはイマイチ理解ができない趣向だ。風邪をひいた時はいつもお茶以外喉を通らせなかった。

 

2月に旅行に行くらしい事を話した彼女はとても楽しそうだった。海外が三ヶ国。ディズニーが一回。羨ましい。のかな海外は少しうらやましいが、そうだな、一人で高いホテルに泊まったりするのはとても楽しそうだ。

そんな話をしていたら貸したい本があるとの事だった。差し出されたのはこれも例に違わず澁澤龍彦の『暗黒怪奇短篇集』。そういえば買いそこねていた。ちょうどいい機会だし1月中に読むことにしよう。次に会うのは恐らく3月だろうけど。(次の日のメールには感想言い合いたい。と来ていた。返信をする気はない。)

ジャスミンティー殺人の話をした後伊勢丹へ。香水が見たかったらしい。ついでなので俺も探す。ディプティックってパルファム出してたんだね。トワレだと飛びやすいイメージしか無くて手が出なかったけどこれなら欲しいなぁって。

 

買ってしまった、、、25日お金入るからね。しょうがないね。

珍しくスパイシーではなく、甘い香り。頽廃的でもう素敵なの。当分日常使いだな。あーあジョーマローンのナツメグパルファムでたら買うのにな。トワレ飛び易すぎ。

 

 

その後は驚異の部屋を意識した雑貨屋へ。形見函に相応しい函はなかったけど、面白かったな。凄くわかりにくい場所にあったにも関わらず結構すぐに見つかった。地図には強いな本当。

ここでは右手を買う。何に使われてたんだろう。

 

 

その後何をするとの話に。時刻は15時半。帰るにも飲みに行くにも少し早い。

この間一人でビフォア・ミッドナイトって映画を見に行こうと思っていたのだけど、早く帰りたくなって結局行かなかった事を思い出して誘う。「フェミニストの女性に自分を偽らせずに付き合うのはどうすればいいかを主題にしているらしい。」といった事を述べると目を輝かせていたな。気を遣って興味出てきたと言ったのかも知れないけど。

ただ俺はこの人を映画に誘うことが恥ずかしくて仕方なかった。だって休日好きな人を誘って雑貨屋に行った後映画を見てその後飲みに行くなんてあまりにも普通で俗物的じゃん。人間には心を開かないが飼い犬だけには心を開く孤独な青年がよく「ありがち」だと言われてしまうように変人には変人なりの哲学があって紋切型ではダメなのだよ。好きな人と見に行く為に映画に行くのではなくて、映画を見たい者同士がたまたまそこで出会ったから行く。そうでなくてはならない。

梅田スカイビルのシネ・リーブルで見る。ここの映画館はとっても狭かったけど特に可もなく不可もなく。

集中して見るために席を離れて座るか少し話し合ったがまぁ意識しすぎるのも良くないと結局並んで見ることに。

 

内容はとっても良かったな。場面は殆ど変わらずにひたすら二人の会話が流れる様な形だったけど最後の口論は素敵だったなぁ。あの夫が所謂一般的な男性の見解なのだろうな。

 

フェミニズム溢れる映画だったので所で彼女はこの映画をどのように捉えたのだろうと思っていると話を振られる。どうやら同じことを考えていた様で。

女性側に立って話を進める俺に対し女性批判から入る彼女。これじゃまるであべこべじゃないかと思わず笑ってしまうがどうやらそうではないみたいで。

 

「あの女性はフェミニストの皮を被ったただのワガママな女。後になって文句を言うならその時に文句を言うべき。」

「なるほど納得。さすが本当のフェミニストだね。」

「やめて、あの人達と一括りにしないで笑」

 

スカイビルから駅へと向かう途中でグランフロントのイルミネーションを見に行く。あぁもうどうしようランチ→香水→雑貨→映画では飽きたらずイルミネーションだって?俗物も俗物ああああもうどうしよう。でも確かに綺麗だったのかもしれない。いや、綺麗だったな。気分はとても晴れやかだった。イルミネーション見て心を踊らせたのは恐らく今回が初めての事だろう。今まで何人の女性と二人でイルミネーションを眺めたりデートに出かけただろう。それなのに。どうして今更初めてなんだ。俺はこういった物を楽しめるはずがないのに。どうして。

 

 

梅田は人が多いということで岡本に移動。その時に過去の、出会った当初の事をつらつらと。

「いけすかない女だった。最大限の予防線を張ったつもりだった。」

「酷い笑 認識がずれすぎているよ。考えすぎ。」

 

店をどこにするか軽く考える。映画にワイン出てきたし日本酒よりもワインだなとそのまま店へ。

 

 

「一人の人生を楽しむことに長けている俺でも実は恋をしたことがある。俺は性別がはっきりしていないので数多の男の様にあの女を身体的に手に入れたいといった感情に欠ける。そんな俺がだ。一人の女性を本当に愛した事がある。もちろん初恋だ、実るものでなかった。最初の人を俺は運命の人だと思ったよ。本当に好きだった。この人は最初で最後の人だと思った。だからその恋が終わった時、俺はジェンダーロールに従順であろうと決めた。でも無理だったんだ。自分の性に疑問を持たずにいることも、相手に自分を理解させることも、相手の前で自分を偽らない事も。俺は絶望したよ。いや、絶望ではなかったのかもしれない。ただ、変わり者だと認識をせずにはいられなくなったな。そんな時だ、幸か不幸か俺はもう一度恋に落ちた。ただ、その恋が俺にとってよかったものなのかは今の段階ではわからない。恋は一度でよかったのだ。一度であればその相手を運命の相手だと思い込めた。だがどうだ。恋が何度も出来るようであれば、運命の相手は存在しないことになるじゃあないか。それが実るものではない以上俺は三度目を期待することが出来るという意味では恋をしたことは幸せだったのかもしれないけど。」

「あれっ?二人目の話なんて聞いてたっけ?」

「ああ言ってなかったっけ。貴女の事です。」

「え?」

 

「でも俺にとって貴女は手に余るなぁ笑」

「それは私も同じこと。貴方は私の手に余るよ笑」

 

本当に他人を尊重するのであれば付き合う必要はない。だって、「恋人」なんて枠に嵌めてしまったら人生楽しめなくなっちゃうじゃん?

あぁ、箱庭だなぁ。なんて素敵なんでしょう。失われてしまうからね。あぁ素敵。