あくつけき

日記みたいな

吉野弘「生命は」

吉野弘「生命は」

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生命は 自分自身だけでは完結できないように 

つくられているらしい 

花も 

めしべとおしべが揃っているだけでは 

不十分で 

虫や風が訪れて 

めしべとおしべを仲立ちする



生命は 

その中に欠如を抱き 

それを他者から満たしてもらうのだ 

世界は多分 他者の総和 

しかし 

互いに 

欠如を満たすなどとは 

知りもせず 

知らされもせず


ばらまかれている者同士 

無関心でいられる間柄 

ときに 

うとましく思うことさえも許されている間柄 

そのように 

世界がゆるやかに構成されているのは 

なぜ?

花が咲いている 

すぐ近くまで



虻の姿をした他者が 

光をまとって飛んでいる 


私も あるとき 

誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき 

私のための風だったかもしれない

吉野弘『生命は』(リベラル社/2015/Kindle版)

 

 

 

 

吉野弘は昨年亡くなった詩人だ。Kindle版は彼の詩をまとめたもので、文芸文庫よりも容易に手に入る。尤も、文庫になっていないものでも日本の古本屋という古本検索サイトを使えば出てきはするのだが。

まぁそんなことはどうでもいい。ここで書いた所で誰か買うわけもない。


 

上手く、生きることのできない人がいる。「上手く生きるとは何か?」を問われれば、万人が納得する答えを書けはしない。よってここでは「自分はこの世界に向いていない」と苦しむことのない人を、上手く生きることのできている人とし、苦しみ続けている人を上手く、生きることのできない人とする。「上手く生きることができない人」の方が文法的には正しい気もするが、何も考えずに書いてみるとそうなってしまったので、そのままにしておく。

 

せっかくなので例え話でもしよう。

1「上手く生きることのできない人」

2「上手く生きることができない人」

さて、正しいのはどちらだろう。現代日本語において、助詞の〈が〉は主格を表すので、より正しいのは2の方になるのだろう。もっとも、意味は問題なく通じるのだろう。

しかし、意味が通じるからといって良いわけでもない。大切なのは、筆者は自然に間違いを犯してしまった、ということだ。そのことを自覚して、少し傷ついた。

どちらかを直感で選べと言われた時、正解を選ぶ人の方が多いだろうか。それも関係ない。なぜなら、多くの人はこんな問題に間違えたくらい、なんとも思わないからだ。

普遍的なことを書こうとしたのに結局自分の話になってしまった。少し笑う。

つまり何が言いたいかと言えば、世の中には

「自分が犯してしまった無自覚な間違いを許容できずに苦しんでしまう人がいる」

ということだ。

 

俺は、多分そういう人間だ。さらに言えば、そうやって自分を責めつつも結局何もしないまま、半端に苦しみ続けるだけの、愚かしい人間だ。「悔しさ」とか「罪悪感」とかをバネに、頑張る、といったこともせずに、ただただ、苦しみ続ける。書いてみると本当に愚かしいな笑 まあ、結局許せないとか許容できないからといって自分の腕にペーパーナイフを突き立てたりするのもただのキチガイだけれども。

 

さあ、苦しまないにはどうすれば良いのだろう。上にも書いたが間違いを補うだけの努力をする、というのは1つの方法だろう。それこそ悔しさをバネにして生まれた素晴らしい「何か」というのは世の中にはたくさん存在するだろう。努力に夢中になってしまえば、過去の間違いに割く意識というのも減り、あらゆる意味で、好転するだろう。しかし過去は、薄れるだけで消えはしない。それこそ、リライフやオレンジのようなタイムリープ物が万人にウケる理由だろう。創作の世界で不可能を可能にして、他者の欲求を叶えているのだから。

では、消えない、許せない過去をどう扱えば良いのだろう。バネにしても消えない。人前ではっきりと「あの時を糧に今を生きている」と、言えるようになっても1人でいる時ふと思い出し許せない過去を、どう扱えば良いのだろう。

 

これを読んでくれている人はもうとっくに気付いているかも知れない。許せないから「許せない過去」に苦しむ。許容できないから「許容できない過去」に苦しむ。だったら許してやればいいのに、と。

 

結局はここなんだよね。間違ってしまった自分を許せない。愛せない。そうなってしまった時、人は自分で自分を愛そうと努めるより先に、他者からの無償の愛を求める。無償の愛を注いでくれるのは、親のみだ。しかも、その中でも限られた一握り、だけだ。だから、上手く生きることのできない人、は他者からは無償の愛を得られないと実感した後、詩や、小説/アニメ/漫画etc等、別の世界や、ホストなどに、金銭を払い没頭していく。

 

 

 

空が灰色染みてきた。

 

自分を、愛せなくなってしまった時、吉野弘の詩はオススメします。はい、俺はこれが言いたいだけでした。ちゃんちゃん。